フォントのディープな世界に浸れて好評だった前回のフォントの会。
11月13日に第2回を開催しました。
前回の内容はこちら
https://884labo.com/2019/10/19/font/
第1回は、フォントの種類の多さや、作られた背景、街の中でどんな文字が使われているか、実際にフォントを選ぶときのポイントなど…初めて知ることばかりで、あっという間の時間でした。
第2回の今回は、実際にフォントを作ってみよう!ということで、参加者それぞれでフォントを作ってみました。
では、当日の様子をレポートします。
イベントは、フォントのよもやま話から始まります。
最近、こんなかわいいフォントを見つけました!
フォントデザイナーで活躍している人って日本にどれくらいいるんですか?
HelvetiaとArialの違いを比較したり、カーニングの大切さを事例でみたり。
前回に引き続き、フォント好きの筈井さんをゲストに会話が進んでいきます。
当日は、草津在住のイラストレーターさんが2名いらしたので、フォントを使うときに意識していることを聞いてみました。
「意識しているのは・・・読みやすさですね。
おじいちゃんおばあちゃんが見るようなチラシであれば、文字は大きく読みやすいもの。若い人向けであれば、文字が小さめだったり、デザイン性のあるフォントを使ったりします。」
「最近手がけた“たび×たび草津”のチラシは、日帰りで気軽に参加できるツアーなので、たび×たびの部分を手書きで仕上げて、気軽さを表現しました。漢字の部分は、既存のフォントに丸いうろこを足しています。
明朝体で歴史感を表現しつつ、重くならないように、うろこを丸くしています。最後に、“草津”の漢字の点で印象に残るよう、旅の動きの感じも表してみました。」
なるほど、デザインする時にそういう想いが込められているんですね。
フォントやデザインのできる背景を聞けるのは面白いなと思いつつ、いよいよフォント作りに移ります。
フォント作成には様々なソフトやアプリがありますが、今回は「iFontMaker」というiPad専用アプリを使用しました。(950円で、小学校に習う漢字も含めて2千文字以上書けるコスパ良しアプリです)
下書きがあるので、1秒で書けます。
みんな黙々と書いています。
小学校の書道の時間のようです。
最終的には、各々が作った文字の中から、イベント会場である「みんなのハナレ」の文字を抽出して並べて見ることがゴールです。
方眼用紙で構成を練ったり・・・何度も書き直したり・・・
無言の時間が続きます。
フォントを作る楽しさの一つとして、実際に自分が書いたフォントをWordやパワポなどのソフトで使えることですね。(自分で書いたフォントは実際に使えるように各自にお渡ししました。)
今回フォントを書きながら思ったのですが、「・・・私があの世に行ったとしても、自分の手書きフォントがあれば、子供に手紙を書けるではないか!!!」(作成・出力は私はできませんが…)
手書きフォントは、何か壁にぶち当たった時、ふと会いたくなった時、その人の温かさに少しでも触れることができるかもしれません。ということで、私と夫の文字はフォントにして残しておこうと思います。
話を戻します。ひらがなも、さ行くらいになってくると、もう、ただいつもの字を書いてるだけになってきます。これを、漢字まで何千文字分を作ると思ったら、それはそれは果てしない作業だなと全員が感じていました。
ではでは、全員がある程度書き終えたところで、“みんなのハナレ”を抜き出して並べてみます。どんなことを思いながら書いたかも聞いてみました。
それぞれのフォントとコメントです。
「普段書いている字のまんまですね。ただ、“ん”だけは特徴的にしたいなと思って書きました。」
「僕も普段書いているそのままの文字です。1文字ずつ書いていたので、“ハ”とかはどの大きさにすればいいかちょっとわからなかったですね。」
「ちょんとでている部分(フォント用語でウロコ)はかわいさを表現しようと思って書きました」
「書いていたらハナレと全然関係ない感じになってきたけど、三角をところどころに入れてみました。どこかでこんなフォント見たことある気がする・・・」
「ハナレの好きな雰囲気をイメージして、繋がりが繋がるような、余韻がのこるような、そんな字を意識して書きました。1文字ずつ書いたので文字を合わせてみた時に全体のバランスをとるのが難しいですね。“か”や“が”を書くとき等、一度書いた文字を同じように書くのも中々難しいですねー!」
「古民家や歴史のある古い部分と、新しいことをやっている部分をイメージして、歴史ある部分は、教科書的なひらがなの形で表現しつつウェイトを軽くして、新しさを演出してみました。
あと、“誰でも気軽に来れるように”という意味合いで『み』の横のラインを下げています」
みんな同じフォントはひとつもありません。
フォント作成アプリは基本的に下書きをなぞる形式なので、似通う部分はあるかもしれませんが、それでも各々で表現が異ります。最後のお二人はプロの方なので、想いを文字として表現できるあたり、さすがだなと思いました。
他の文字も抽出して並べてみました。
以下はイラストレーターのお二人の文字。
雰囲気が出ていて素敵ですね!
一方で、文字間の余白が狭かったり広かったり、大きさが違ったりとバランスが崩れている部分もあります。特徴的な文字にするほど大きさや前後との調和感が難しいですね。
1文字1文字が美しくても、全体で美しくないとフォントとして成立しないんだなと実感。
フォントを作るのは初めてでしたが、こうやって、1つ作ったら、単語や文章にして全体を見て、また修正する・・・永遠にその繰り返しなんだろうなと思いました。
1つのフォントを作るのに、3年や5年はざらにかかるそうです。日本語は、漢字もあるので文字数がとにかく多くて大変そう。普段何気なく使っているフォントですが、有り難さを感じながら使いたいですね。
何事も、やってみて気づくことはたくさんあります。
今回のフォントの会も、いきなりフォントを作ってみましたが、フォントの作り方や、大変さ、ありがたさ…いろいろ気づきがありました。
文字に向き合う時間って、手書きが少ない最近では貴重な時間です。
たまには文字をひたすら書くのもいいものですね。
今回は、カタカナ平仮名をひたすら書いて“みんなのハナレ”という単語を抜き出しただけでしたが、「ハナレはこんな雰囲気だからこういう感じの丸みかなあ・・」のようにハナレについて考える時間が結構ありました。
きっとフォントを作るときは、ただ文字のことを考えるだけじゃなく、実際に使われる場所やその背景のことなんかを考えて言語化していくものなんだろうなと感じています。
そうしてフォントの会はお開きに。
今回は、「フォントを作ってみよう」とイベントを開催してみましたが、作って終わりじゃなくて、きっと実際にお店のチラシなんかで使われたり、自分で使えるのが醍醐味ではないでしょうか。
ということで、次回からは、みんなのハナレのチラシなどで使用するフォントを作っていこうと思います。ひらがな、カタカナ、英数字…(漢字はどうするか検討中)
いずれ参加してくれた人にはご自身の名刺やチラシなどでも使えるようにお渡しする予定です。(あわよくば、ハナレ周辺のお店あたりでも使ってもらえたらなあなんて)
自分が携わった文字が町で使われていたり、自分でも使えたりしたら嬉しいものです。
合わせて、毎回フォントを作ることを仕事にする人や、デザイナーさんなども呼んでみようと企画中。
草津の宿場町の歴史と、いろんな人やモノが動き始めている新しさがあふれるフォントができたらいいなと思っています。